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基本法(新憲法)試案の人権原理について(2) [ネクストの研究]

基本法(新憲法)試案の中の2種類の「人権」について(2)
                    2023.6.21 小宮
[テーマの説明]
 6月18日にアップした(1)の続きです。
金泰明さんの現代人権論をもとにして、ネクスト基本法における「基本的人権」と
「公共的基本権」の根拠づけを考えてみました。(1)で引用した文章を再度示す
ところから説明を始めます。

 (1)では、2種類の人権原理の中で「ルール的人権原理」と呼ばれるものがネ
クスト基本法にはふさわしい、と述べた。ルール的人権原理とは、金さんによれば、
  「 これに対して、ルール的人権原理は、合意・同意を権利の根拠にし、
   ルールによる社会秩序の形成と運営を図る原理である。まず、各人の生
   き方の自由―生の自己決定権―が相互に認められるということが主題
   とされる。そして、対等な資格で市民社会のルール関係に参加する。こ
   こからは、対等な市民による対話や議論と民主的手続きに基づいて合意
   や共通な意思が形成され、ルールが作られる社会が展望される。」
 この考え方にもとづけば、基本的人権と言われるものも、社会を構成する人間同
士の合意・同意によって根拠づけられ、社会秩序のルールとして定められたものだ
ということになる。
 この視点でネクスト基本法の「基本的人権」に関する条項を眺めてみると、そこ
で目ざされている社会秩序は、以下のような性質のものであることがわかる。
1) 人権思想が確立され、その実現が保障されている社会
2) 平等の理念が基礎となり、あらゆる種類の差別が行われない社会
3) 個人の自由が尊重され、各種の自由権と財産権が保障されている社会
4) 生命が最高の価値とされ、誰もが心身を害されず、健康に生きる権利が保障
  される社会
5) 社会保障と福祉の理念が確立され、すべての社会的弱者・子供たち・高齢者
  が不安なく生きられる社会
6) 公的権利が尊重され、すべての住民に政治参加の自由が保障されている社会
7) 公的権利が尊重され、すべての住民に司法領域での正当な権利が保障される
  社会
 こうした社会秩序によって保障される各種の個人の権利が、いわゆる基本的人権
であると考える。したがって、その根拠づけに必要なのは、こうした基本法(新憲
法)を作る時に確認される人々の合意であり、同意である、ということになる。
 現代の世界に生きる人々と、より良い社会を目ざすネクスト・デモクラシー基本
法が制定される近未来を想定してみるならば、そうした合意は必ず得られるものと
予想するのだが、どうだろうか。
 では、もう1つの人権のカテゴリーである、公共的基本権については、どうだろ
うか。これも、根拠づけの原理という点では、まったく同じであっていいと思う。
ルール的人権原理は、ネクスト・デモクラシーの政治理念と適合するものであり、
その政治体によって保障されるべき公共的基本権もまた、人々の対話、合意によっ
て基礎づけられるべきものだと思うからである。
 
 根拠づけという点では同じだが、基本的人権と公共的基本権は権利の性質という
点での違いがある。
 この点から見ると、基本的人権は、あるべき社会秩序のもとで守られることが約
束された個人の権利である。
 一方、公共的基本権は、ある政治体の下で生活する住民全体が享受すべき権利で
あり、各レベルの政体が政治と行政によって実現・維持すべき社会の状態を表すも
のである。
 つまり、個人の権利と集団の権利という違いであるが、「あるべき社会秩序」と
「維持すべき(=望ましき)社会の状態」という部分を見れば、類似または関係の
深いものを目ざしている場合もある。例えば、差別なき社会、健康に生きられる社
会、福祉の充実した社会、戦争なき社会などであるが・・。その場合、2つの種類
の人権の関係は、どちらかが基礎であるというよりは、同一の社会状態の2つの表
れとして見るべきだと考える。
                              (了)


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