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第3部4章 新政体の憲法試案 [提言]

第3部
第4章 新政体の憲法試案

はじめに
 ネクスト・デモクラシーを確立するためには、その政体の基本法となるものを
制定する必要がある。それは、日本国憲法との関係では全面的な憲法改正を意味
するものであるため、大きな政治的変動の過程を経ることによってのみ可能に
なるだろう。その過程全体が具体的にどのようなものになるかは予言できない
が、過程の終盤には憲法制定の会議が開かれて、憲法案が決まっていくことにな
るはずである。
 したがって、実際の基本法の内容はその会議を構成する人々の意向の総和に
よることになるが、ここでは私の考えた一試案を示してみたいと思う。案の作成
にあたっては、日本国憲法はもちろんのこと、欧州各国の基本法も参考にしつつ、
それらを超えた、より民主的で人道的な性格のものにしていくことを目ざした。
その結果まとまったものが、以下の試案である。

***********************************

『日本列島市民政治体の基本法』(案)

前文
 20xx年、日本列島に住むすべての住民は、「連帯民主主義」に基づく新た
な政体を樹立し、その下で共に生活していくことを決定した。
 「連帯民主主義」の政体は、「人々の、人々による、人々のための政治」とい
う理想を現代において実現することを目ざすものである。また、よりよき経済と
よりよき社会を作るためのさまざまな政策の発案と実施をつねに促進していく
ためのものである。
 この政体の主人公は、いかなる公務も持たない、普通の生活者である私たち市
民である。私たちが自らの意思にもとづき、議員選挙をはじめとする複数の方式
によって政治参加を行い、それによって「人々による政治」を現実のものとして
いく。
 政治的権利は、国籍を問わず、すべての住民に与えられる。その他の権利につ
いても、国民であるかどうかは関係なく、すべての住民が平等の権利を与えられ
る。国民国家は無くなり、国民という言葉は過去のものとなる。
 「国」・「国家」という言葉と考え方も消滅する。そこには、ただ市民たちの日
常を生きる社会があり、その社会の有用な道具としての市民政府・行政機構が作
られ、機能していくだけである。
 私たち日本列島の住民は、こうした性格を持つ新たな政体を構築し、運営して
いくための基本法として、以下の憲法を定め、守っていくことにする。

第1章 総則
第1条(「日本列島政治体」)
    日本列島政治体は、この地域に住み、生活をする全ての住民のための
   ものである。その政治は、近隣地域の政体から中央の政体に至るまで、
   そこに居住する住民の自治によって行われる。
 2項 この政治体の一員となることを希望する人は、市や地区の事務局にお
   いて住民の登録手続きを行うことだけで、正規の有権者となることがで
   きる。
第2条(「公共性の政治」)
    現代における住民の自治は、以下のような性質を持つものでなければ
   ならない。これを「公共性の政治」理念と呼ぶ。
    「 公共性の政治とは、すべての住民が対等の関係において、自由と
     連帯の理念および民主主義の運用ルールに基づき、個人の自由と多
     様性を尊重しながら共通の課題に取り組んでいく時に生まれる政治
     の質を指すものである。」
第3条(権利の平等)
    この政治体においては、すべての住民が対等の関係にある。すべての
   住民は、基本権においても政治的権利においても平等な権利を持ち、差
   別されない。
第4条(自由と連帯)
    この政治体においては、すべての住民が互いに協力し、自発的に助け
   合うという意味で、自由と連帯の理念によって結ばれる。公共性の政治
   は、この関係を基礎として成り立つものである。
第5条(多様性の尊重)
    この政治体は、各種の多様性が尊重される中で人々が生きていける社
   会を目ざすものである。いかなる意味でも少数者が差別され、排除され
   ることがあってはならない。
第6条(分権と自治)
    この政治体の政治と行政は、分権と自治の原理にもとづいて行われる。
    これを構成する地区の政体、市の政体、地方の政体、中央の政体は互
    いに独立性を持ち、協力しながら、政治と行政の活動を進めていく。
各政体の機能と権限範囲については、第4章に記述する。

第2章 公共的権利と政府の基本的任務
     すべての住民は、基本的人権の他に、政治体によって保障されるべ
    き公共的権利を持つ。これらの権利が保障される状態を実現し、維持
    することは、各政体の政府の基本的な任務である。
[平和]
第7条  すべての人は、いかなる戦争にも巻きこまれず、平和に生活してい
    く権利を持つ。これを平和生存権と呼ぶ。
第8条  私たちの政府と公務員は、平和を守り抜くために最善の努力を尽く
    す義務を持つ。
第9条  私たち日本列島の住民は、いかなる理由であれ、戦争という野蛮な
    行為をしない。このことを全世界に向けて誓う。
  2項 私たちは、抑止力となるものを含めて、いかなる戦力も持たない。
    前項の「戦争放棄」とともに、「戦力の不保持」を全世界に向けて誓
    う。
第10条 私たち住民とその政府は、核兵器の廃絶のために全世界の人々と連
    帯して行動していくことを誓う。
  2項 私たち住民とその政府は、あらゆる兵器の開発・貯蔵・売買・供与・
    使用に反対する。その全面廃棄を呼びかけ、戦争の無い世界を目ざし
    ていく。
[共生]
第11条 すべての人は、民族や人種、国籍や宗教によって差別されることが
    ない社会に生きる権利を持つ。これを共生生存権と呼ぶ。
第12条 すべての人は、性別や身分、セクシュアリティ、各種の障がい、各
    種の病気、放射能被曝などによって差別されない社会に生きる権利を
    持つ。
[自然環境・社会保障]
第13条 すべての人は、心身の健康に役立つ、安全で良好な自然環境の下で
    生活する権利を持つ。
第14条 すべての人は、健康のために適切な治療を受ける権利を持つ。
第15条 すべての子供と未成年は、希望する人生のために適切な教育を受け
    る権利を持つ。
第16条 働く能力を持つすべての人は、雇用を保障される権利を持つ。
第17条 すべての人は、絶対的および相対的貧困から解放された生活を送る
    権利を持つ。
第18条 すべての高齢者は、老後の不安と困窮から解放された生活を送る権
    利を持つ。

第3章 個人の基本的権利と義務
[基本権]
第19条 すべての人は、侵してはならない基本的人権を持ち、かけがえのな
    い個人として尊重される。
  2項 すべての人が、法の前の平等を保障される。
第20条 すべての住民は、平等の政治的権利と義務を持つ。
  2項 選挙の有権者となる年齢は、法律によって定める。
  3項 すべての人は、議会外で活動する政治結社を形成し、参加する自由
     を持つ。(これまでの「政党」については第4章39条で述べる。)
第21条 すべての人は、生命への権利と心身を害されない権利を持つ。これ
    を損ない、侵害する行為は、すべて犯罪である。
  2項 すべての人は、あらゆる種類のいじめとパワーハラスメントの被害
    を免れる権利を持つ。
  3項 すべての人は、過酷な労働条件で働かされることから保護される権
    利を持つ。
第22条 すべての人は、自由意志にしたがって行動し、幸福を追求して生き
    る権利を持つ。個人の意思は最大限に尊重されなければならない。
第23条 すべての人は、結婚の自由と職業選択の自由を持つ。
  2項 同性同士であっても、結婚することができ、法的に差別されない。
  3項 結婚が可能になる年齢は、法律によって定める。
第24条 すべての人は、移動の自由と移住の自由を持つ。
  2項 この政治体から離脱したい時は、住民登録の停止を申請することに
    よって、手続きを完了することができる。
第25条 すべての人は、表現の自由を保障される。ただし、差別的言動やイ
    ンターネットなどを通じて他者を傷つける行為は許されない。
  2項 すべての行政機関は、検閲やイベント中止などによって個人の表現
    行為を妨害してはならない。
第26条 思想信条の自由、信仰の自由、良心の自由は、不可侵の権利として
    保障される。
第27条 すべての人は、プライバシーを保護される権利を持つ。保護される
    べき情報の範囲は、法律によって示される。
第28条 すべての人は、自分の所有する財産を守る権利を持つ。財産には、
    多くの種類の知的財産の他、価値あるデータや情報なども含まれる。
第29条 すべての勤労者(公務員を含む)は、労働組合を作り、経営者(行
    政の当局)と交渉し、ストライキを行う権利を持つ。
第30条 すべての大学生と専門学校生は、自治的組織を作り、教育機関当局
    と交渉し、よりよい条件の下で教育を受ける権利を持つ。
第31条 すべての人は、学問の自由を持つ。これを保障するため、教育機関
    の自治は尊重されなければならない。
[住民の義務]
第32条 すべての人は、法律・条令その他の公共的な規則を守る義務を負う。
第33条 すべての人は、法律の定めにしたがって納税する義務を負う。
[子供と未成年]
第34条 子供と未成年は、生命への権利と健康で人間らしい生活を送る権利
    を持つ。
  2項 子供と未成年は、あらゆる暴力・虐待・搾取から守られ、幸福に生
    きる権利を持つ。
第35条 子供と未成年は、その意思が尊重され、自由に発言や活動ができる
    権利を持つ。
  2項 子供と未成年は各種の政治活動をする権利を持つ。
  3項 子供と未成年は、親の信じる宗教によって発生する、あらゆる苦痛
    から救われ、自由に生きる権利を持つ。

第4章 政体に関する規定
[全体構成]
第36条 この政体の全体は、分権と自治の原理によって構成されている。
    したがって、地区は市(農村部では郡、大都市部では区)に対して、
    市は地方に対して、地方は中央に対して独立性を持ち、それぞれの
    範囲内で自治を行うことができる。
第37条 各レベルの機能は、補完性の原理によって決定される。したがって、
    地方は市に対して補完的な機能を持ち、中央は地方に対して補完的な
    機能を持つ。
第38条 全体は大きく、市レベルの政体、地方レベルの政体、中央レベルの
    政体に分けられる。市レベルの政体にはこれを細かく区分した地区の
    政体、地方レベルの政体にはこれを区分した広域連合の政体が含まれ
    る。(各政体の機構図を参照)
第39条 各レベルにおける議会政治および各種の選挙は、政党が関与しない
    形で行われなければならない。
  2項 こうした活動を行う団体としての政党の結成は禁止される。
第40条 政治と宗教は厳しく分離されなければならない。
  2項 公金は、特定の宗教団体のために支出されてはならない。

[市レベルの政体]
第41条 市レベルの政体には、①市評議会、②執行委員会と事務局、③地区
    委員会と事務局、③各種の行政委員会と事務局の4つが含まれる。
    執行委員会と事務局は、市の政府にあたるものである。
  2項 市レベルの政体は、位置する地域によって名称が変わる。農村部
    では、郡の政体、東京特別区(23区)では区の政体と呼ばれる。
    以下では、市をそれらの総称として用い、表記する。
第42条 市評議会は、討議と議決のための機関として、市の民主政治の中心
    となる。その成員を評議員と呼ぶ。
  2項 市評議員は、市に住むすべての成人住民を有権者とする普通選挙に
    よって選ばれる。すべての成人住民は、立候補する資格を持つ。
  3項 市評議会は、男女同数の評議員によって構成される。
  4項 市評議会には、外国籍の評議員が含まれる。韓国・朝鮮籍と、その
    他の国籍に分けて、人口割合に比例した議席数が確保される。人口割
    合に比例した議席数が1未満になる場合は、それぞれ1議席とする。
  5項 市評議員は、非常勤公務員として活動し、勤務日数・時間に応じた
    給与を受け取る。任期は3年とし、5期まで再選されることができる。
第43条 市執行委員会は、評議会の決定事項を執行し、市の行政の中心と
    なる機関である。
  2項 市執行委員会は、評議会の中で執行委員選挙によって選ばれる。
    執行委員の任期は1年とし、再選されることができる。
  3項 市執行委員は、事務局の中に置かれる各種の行政委員会のどれか
    1つに所属し、執行委員と行政委員を兼任する。
第44条 地区の政体は、各市の中の中学校区毎に置かれる政治・行政の機構
    である。郡の場合は、旧来の町・村がそれぞれ1つの地区となる。
第45条 地区委員会は、討議・議決の機関であると同時に、日常的な行政活
    動の機関でもある。
  2項 地区委員は、すべての成人住民の普通選挙によって選ばれる。すべ
    ての成人住民は、これに立候補する資格を持つ。
  3項 地区委員会は、男女同数の評議員によって構成される。
第46条 年1回、地区の住民総会が開かれる。ここでは、地区委員会の活動
    方針、活動報告、決算報告と予算案、特別議題などが話し合われる。
  2項 地区の住民は、いつでも地区委員や事務局に何らかの行政活動を要
    請したり、議題の提案をしたりすることができる。
第47条 市の行政委員会は、事務局の中に置かれ、各行政部門の活動を指揮・
    監督する機関である。
  2項 各行政委員会は、同数ずつの市評議員と市公務員によって構成され
    る。評議員の配置は、市評議会によって決定される。
第48条 地区の政体は、下記のような権限の範囲を持つ。
    ① 教育分野:保育園・小学校・中学校
    ② 福祉分野:高齢者・障がい者・基準以下の低所得者
    ③ 文化分野:図書館・文化活動・スポーツ
    ④ 保健分野:感染症関連の行政サービス、在宅医療の支援
    ⑤ 防災分野:避難訓練・各種防災点検と市への報告
    ⑥ まちづくり分野:まちづくりの支援
  2項 市の政体は、市政の全般と市民生活に必要なすべての機能に関する
    政治と行政活動の役割を持つ。
第49条 市の政治は、市評議会における討議の他に、以下の2種類の直接民
    主主義的方法によって行われる。市評議会は、これらによって得られ
    た結果を尊重しつつ、決定を行わなければならない。
    ① 決定力を持つ住民投票 ②電子機器を用いたタウン・ミーティ
    ング
第50条 外国籍を持つ住民の声を市政に反映するために、外国人市民会議が
    定期的に開かれる。市の諸機関は、この会議の成果を活かして、外国
    人も住みやすい街にするための活動に取り組んでいくべきである。

[地方の政体]
第51条 地方の政体は、市レベルと中央レベルの中間に位置する政体である。
  2項 地方の政体の中には、各地方を2つ、または3つに分けた広域連合
    の行政機構がおかれる。広域連合は、その中にある市や郡の連合体で
    ある。
第52条 地方の区分、広域連合の区分は次のとおりである。
  北海道地方(2):中南部(道南・道央)、北東部(道北・道東)
  東北地方(3):北東北(青森・岩手)、西東北(秋田・山形)、南東北
         (宮城・福島)
  関東地方(4):北関東(栃木・群馬・埼玉)、東関東(茨城・千葉)、
          南関東(東京・神奈川)、東京都心部(23区)
中部地方(3):甲信越(山梨・長野・新潟)、北陸(富山・石川・福井)、
        東海(静岡・愛知・岐阜・三重)
関西地方(3):西関西(大阪・兵庫)、東関西(京都・滋賀)、南関西
       (和歌山・奈良)
中国地方(2):山陽(岡山・広島・山口)、山陰(鳥取・島根)
四国地方(2):北四国(香川・愛媛)、東南四国(徳島・高知)
九州地方(2):北九州(福岡・佐賀・大分・長崎)、南九州(熊本・宮崎・
        鹿児島)
沖縄地方(2):本島地域(本島・沖縄諸島)、先島地域(八重山群島・宮古
        群島)
第53条 地方の政体には、①地方評議会、②地方〈経済〉評議会、③地方
     〈社会〉評議会、④執行委員会と事務局、⑤広域連合と事務局、
     ⑥各種の行政委員会と事務局の6つが含まれる。
      執行委員会と事務局は、地方の政府にあたるものである。
第54条 地方評議会は、討議と議決のための機関として、地方の民主政治の
    中心となる。その成員を地方評議員と呼ぶ。
  2項 地方評議員は、その地方で活動するすべての市評議員を有権者とす
    る選挙によって選ばれる。すべての市評議員は、立候補する資格を持
    つ。この選挙の具体的方法は法律によって定める。
  3項 地方評議会は、男女同数の評議員によって構成される。
  4項 地方評議会には、外国籍の評議員が含まれる。在日韓国・朝鮮人と、
    その他の人々に分けて、人口割合に比例した議席数が確保される。
     北海道地方評議会には、先住民族アイヌの評議員が含まれる。
     これらの評議員の選出方法は、法律によって定める。
  5項 地方評議員は、常勤公務員として活動し、毎月給与を受け取る。
    任期は3年とし、5期まで再選されることができる。
第55条 地方執行委員会は、評議会の決定事項を執行し、地方の行政の中心
    となる機関である。
  2項 地方執行委員会は、評議会の中で執行委員選挙によって選ばれる。
     執行委員の任期は1年とし、再選されることができる。
  3項 地方執行委員は、事務局の中に置かれる各種の行政委員会のどれか
    1つに所属し、執行委員と行政委員を兼任する。
第56条 広域連合は、市と地方の中間レベルに位置する行政の機構である。
     この行政機構は、その地域に含まれるすべての市・郡の連合体とし
    ての性格を持つ。
  2項 広域連合には、1つの運営委員会と必要な数の行政委員会が置かれ
    る。運営委員会は、広域連合の行政の中心となる機関である。
  3項 運営委員と行政委員は、その区域に属するすべての市・郡・区評議
    会から1人ずつ選ばれる。
第57条 広域連合と地方の政体は、下記のように権限の分割を行う。
  広域連合:防災・救助、インフラ管理、交通管理、私企業管理、雇用・労
       働、医療・保健、生活福祉、環境保全、農林・水産業支援
  地方政体:以上の9つの他に、教育、文化・芸術、社会改革、経済政策・
       経済改革、産業政策、エネルギー、地方放送・通信、地方づく
       り、土地・建築の管理、観光の振興など。
  2項 共通する9つの分野については、地方政体が政策の決定、地方全体
    の計画の作成、予算配分を行い、広域連合が広域内の詳細計画と実行
    を担当するという分業体制にする。
第58条 地方〈経済〉評議会は、その地方において「よりよき」経済を実現
    するために何をすべきかを議論し、その方策を決定するための機関で
    ある。
  2項 評議員の構成は、経営者代表が4分の1、労働者代表が4分の1、
    専門家が4分の1、一般市民が4分の1となる。それぞれの選出方法
    は、法律によって定める。
第59条 地方〈社会〉評議会は、その地方において差別・抑圧のない社会を
    実現するために何をすべきかを議論し、その方策を決定するための機
    関である。
  2項 評議員の構成は、当事者代表が4分の1、関連市民団体が4分の1、
    専門家が4分の1、一般市民が4分の1となる。それぞれの選出方法
    は、法律によって定める。
第60条 上記2つの評議会は、地方評議会と協働しながら、担当する諸課題
    の解決に取り組む。
  2項 同じ議案について、地方〈経済〉評議会(または地方〈社会〉評議
    会)と地方評議会の結論が異なる場合は、前者と後者が協議して決
    定する。
  3項 協議による調整ができなかった場合は、住民投票を行い、その結果
    にもとづいて決定する。
第61条 地方の政治は、3つの評議会における討議の他に、以下の3種類の
    直接民主主義的方法によって行われる。地方評議会は、これらによっ
    て得られた結果を尊重しつつ、決定を行わなければならない。
     ① 決定力を持つ住民投票 ②討議型世論調査 ③電子機器を用い
    たタウン・ミーティング

[中央の政体]
第62条 中央の政体の主な役割は、以下の諸機能に関する政治・行政活動を
    行うことと、緊急時の対応を行うことである。
     ① 国際関係:外交と通商、さらには国連関係の活動、移民・難民、
       国際支援
     ② 出入国と輸出入:入管・検疫など
     ③ 経済全体の政策:通貨・金融システム・税制・産業振興・貿易
       など
     ④ 統一されたルール:さまざまな法律、公的資格認定の基準、交
       通ルールなど
     ⑤ 大災害時の緊急支援や復興支援
     ⑥ 各種インフラや通信網や放送
     ⑦ 技術の開発
     ⑧ 気象予報・地震情報など
     ⑨ よりよき社会・経済のための改革
     ⑩ 新たに発生する諸課題
第63条 中央の政体には、①中央評議会、②中央〈経済〉評議会、③中央
     〈社会〉評議会、④地方代表者会議、⑤中央執行委員会と事務局、
     ⑥各種の行政委員会と事務局、の6つが含まれる。
      中央執行委員会と事務局は、中央の政府にあたるものである。
第64条 中央評議会は、討議と議決のための機関として、中央の民主政治の
    中心となる。
  2項 中央評議員は、その地方で活動するすべての市評議員と地方評議員
    を有権者とする選挙によって選ばれる。すべての評議員とその経験者、
    および、すべての地区委員とその経験者は、立候補する資格を持つ。
  3項 中央評議会は、男女同数の評議員によって構成される。
  4項 中央評議会には、外国籍の評議員が含まれる。在日韓国・朝鮮人と、
    その他の人々に分けて、人口割合に比例した議席数が確保される。
  5項 中央評議会には、男女1名ずつの先住民族アイヌの評議員が含まれ
    る。
  6項 2項・4項・5項の評議員の選出方法は、法律によって定める。
  7項 評議員は、中央評議会で解任が提案され、定数の3分の2以上が賛
    成した時、任期途中で解任される。
第65条 中央執行委員会は、評議会の決定事項を執行し、中央の行政の中心
    となる機関である。
  2項 中央執行委員会は、すべての有権者による普通選挙によって選ばれ
る。執行委員の任期は3年とし、3回まで再選されることができる。
  3項 すべての中央評議員は、候補者グループを形成し、グループとして
    執行委員会選挙に立候補する権利がある。各候補者グループは、中央
    評議会での選挙で1位から4位までの得票数を得ることによって、全
    地方で実施される普通選挙に臨むことができる。これら一連の選挙の
    実施方法は、法律によって定める。
  4項 中央執行委員は、事務局の中に置かれる各種の行政委員会のどれか
    1つに所属し、執行委員と行政委員を兼任する。
  5項 中央執行委員会は、任期の途中であっても、定数の3分の2以上の
    中央評議員が解任決議案に賛成した場合に解任される。その場合には、
    30日以内に、次の執行委員会を選ぶ普通選挙が実施されなければな
    らない。
第66条 中央〈経済〉評議会は、列島全域において「よりよき」経済を実現
    するために何をすべきかを議論し、その方策を決定するための機関で
    ある。
  2項 評議員の構成は、経営者代表が4分の1、労働者代表が4分の1、
    専門家が4分の1、一般市民が4分の1とする。それぞれの選出方法
    は、法律によって定める。
第67条 中央〈社会〉評議会は、列島全域において差別・抑圧のない社会を
    実現するために何をすべきかを議論し、その方策を決定するための
    機関である。
  2項 評議員の構成は、当事者代表が4分の1、関連市民団体が4分の1、
    専門家が4分の1、一般市民が4分の1とする。それぞれの選出方法
    は、法律によって定める。
第68条 上記2つの評議会は、中央評議会と協働しながら、担当する諸課題
    の解決に取り組む。
  2項 同じ議案について、地方〈経済〉評議会(または地方〈社会〉評議
    会)と地方評議会の結論が異なる場合は、前者と後者が協議して決
    定しなければならない。
  3項 協議による調整ができなかった場合は、住民投票を行い、その結果
     にもとづいて決定しなければならない。
第69条 地方代表者会議は、地方間の平等性と連帯を実現するために重要な
    議題について話し合い、決定するための組織である。
  2項 この会議は、中央評議会に参加している評議員から各地方3名ずつ
    を選出することによって構成される。
  3項 議題についての決定は全員一致方式でなされる。そのため、ある地
    方が原案に反対したい場合は拒否権を行使することができる。
第70条 中央の政治は、3つの評議会における討議の他に、以下の3種類の
    直接民主主義的方法によって行われる。中央評議会は、これらによっ
    て得られた結果を尊重しつつ、決定を行わなければならない。
     ① 決定力を持つ住民投票 ②討議型世論調査 ③電子機器を用い
    たタウン・ミーティング
  2項 ②および③の会議によって得られた結論と中央評議会の決定に大き
    な差がある場合、会議に参加した人たちは、その課題についての住民
    投票を請求することができる。最終決定は住民投票の結果によってな
    される。
第71条 中央執行委員会の事務局の組織構造は官僚制的な集権型のものでは
    なく、自由な分権型のものになる。各組織単位間の連絡と調整は、水
    平型のネットワーク構造をもとにして行われる。

第5章 司法の制度
第72条 通常の裁判のための制度は、①広域裁判所、②地方裁判所、③中央
    裁判所の三審制である。この他に、特定の法律、条令、政策などが
    憲法に違反していないかどうかを判定するための ④憲法裁判所、と
    簡単な事案に対応するための ⑤簡易裁判所、が置かれる。
  2項 広域裁判所は、各広域連合に設置される。地方圏裁判所は、各地方
    に設置される。中央裁判所と憲法裁判所は、首都東京に設置される。
    簡易裁判所は、旧都道府県にその広さに応じて、1つから3つまで
    設置される。
  3項 すべての原告および被告は、広域裁判所の判決に不服がある時、地
    方裁判所に上告することができる。さらに中央裁判所で争うことがで
    きる。
第73条 各種の裁判所の裁判官は、政治機構や行政機構からの介入がない形
    で任用される。任用の決定の方法は、法律によって定められる。
第74条 中央裁判所と憲法裁判所の裁判官については、中央評議会で審議が
    行われ、3分の2以上の評議員が賛成した時、罷免することができる。
第75条 すべての裁判は公開の法廷で行われ、傍聴することができる。
第76条 一般市民も「裁判員制度」を通じて裁判のプロセスに参加すること
    ができる。この制度の仕組みと運用については、法律で定める。
第77条 すべての有権者は、まず簡易裁判所において問題提起することによ
    って、ある法律の違憲性を問うプロセスを始めることができる。
    そこで賛成が得られた時、憲法裁判所に訴訟を起こすことができる。
    勝訴した場合、その法律は無効となる。
  2項 各評議会の評議員も、定数の3分の1の議員の賛成が得られた場合、
    このプロセスを始めることができる。

第6章 財政民主主義
第78条 各政体の中央執行委員会と事務局は、評議会と行政委員会の決定
    にもとづいて財政支出を行わなければならない。
  2項 これを確実にするために、毎年、各政体において、厳正な監査が
    実行されなければならない。
第79条 税制の決定や予算案の作成は、憲法が定めた公共的価値の実現を目
    ざして行われるべきである。
  2項 税制の決定や変更は、直接民主制的方法も含めた民主的プロセスに
    よって行われるべきである。
  3項 税収の各政体への配分は、分権の原理の実現という原則にしたがっ
    て行わなければならない。

第7章 憲法改正
第80条 この憲法は、中央評議会の総議員の3分の2以上の賛成が得られた
    時、改正を発議できる。中央の事務局は、これを受けて、全地方にお
    ける住民投票を準備する。住民投票が実施され、有効投票の過半数が
    改正案に賛成票だった時、この憲法は改正される。

第8章 その他の規定
第81条 民主主義を思想的にも確立するため、天皇制と皇室制度は廃止され
    る。
  2項 すべての旧皇族は、一般住民と同等の権利・義務を持つようになる。
    年金等の社会保障の対象にもなる。
  3項 過渡的措置として、旧皇族の人々が一般住民としての安定した生活
    を送れるように、職業教育その他の支援を実施すべきである。これは、
    中央の政体の義務となる。
             

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第3部5章 まとめの考察 [提言]

第3部
第5章 まとめの考察―新しい政体が生み出すもの

はじめに
 この章では、構想の全体をふりかえりながら、この政体の実現によって政治の
あり方や本質的な特徴がどう変わるのかを考えてみたい。次に、この政体が持つ
歴史的な役割と意義を考えてみようと思う。

1節 新たな政体が生み出すもの
[1]全体の仕組みから生まれるもの
 第3部の冒頭で政体構想のコンセプトを、「①評議会制の選出システム、②ロ
ーカル・デモクラシーによる組み立て、③参加民主主義的方法の活用、④民意に
よる政権交代の制度」の4つを結合することであると表現した。このコンセプト
にしたがって構築した全体像を眺めてみると、そこには、自由民主主義の政体と
は全く異なる本質的な特徴があり、本質のレベルの変化が生まれていることが
わかる。
 本質的な特徴は、一言で言えば、民衆の自治を実現する政治制度だということ
である。
 その自治は、民衆という全体集合を政治への関わり方の程度で分類した場合
の3つの層の力の結合によって成り立つものである。1つ目の層は、自ら評議員
に立候補して公的活動に入っていく、最も能動的な人たちである。2つ目の層は、
自発的に集会その他の行動に参加して、多くの有権者の意思を政治に反映させ
ようとする人たちである。3つ目は、直接に行動に参加はしないが、政治への関
心を持ち続け、調査回答や投票などで政治に参加する人々である。この3層の人
たちの行動や反応が相互に影響し合って政治が動くようになる時、それは民衆
の自治であると言ってよいと思う。私は、これこそがネクスト・デモクラシーの
最大の特徴であると考える。
 これとの対比で言えば、自由民主主義政体の政治の本質は、民衆がエリートに
よって統治される政治だということである。この対比にもとづき、新しい政体の
実現によって生まれるものの1つは、「エリートの統治から、民衆の自治へ」と
いう本質レベルの変化であると言える。
[2] ローカル・デモクラシーとの結合から生まれるもの
 ローカル・デモクラシーとの結合は、「連帯の政治」という、もう1つの本質
的特徴を生み出すことになる。この点は、コミュニティ再生に見られる「新たな
共同性」と結びつけて考えると理解しやすくなると思う。
 現代のコミュニティ再生は、生活の中から生まれる自然発生的なものである。
隣人として互いに助け合って生活していこうという気持ち、同じ生活者住民と
して向かい合う意識がそこにはある。
 近隣自治のデモクラシーも、これと同質の意識に支えられて営まれるもので
ある。そうした営みが基礎にある時、市レベルの自治も連帯の政治という性質を
持つものとなる。市は一面で地区の連合体という性格を持っているからである。
地方レベルの自治、中央の政治においても、連合体の原理による連帯の政治と
いう性格は維持される。そこでも、地域間・地方間の協力関係、互いの思いやり、
譲り合いが重要なものとなるからである。
 ということで、この特質も自由民主主義政体との本質的な相違点になってい
ると考える。現政体の政党政治が「競争の政治」という特徴を持っていることと
の対比で言えば、「競争の政治から連帯の政治へ」という本質的な変化が生まれ
ると見ることができる。
[3]参加民主主義的方法の多用から生まれるもの
 各レベルの政体において、直接民主制その他の参加民主主義的方法が多用さ
れ、重要な位置づけを与えられている。このことも政治の質を変えていく上で、
大きな意味を持つものになると考える。
というのは、自由民主主義体制においては、国民は選挙の時だけ主権者として
扱われ、その他の時は単なる被統治者になってしまうのであるが、参加民主主義
的方法が多用されることによって、この点も変わってくるからである。つまり、
[1] で述べたような、民衆の中の3つの層の力の相互作用によって政治が動
くということが増えて、常態化していくことになる。一般有権者は、つねに政治
を動かす力の1つとして機能し続けるのである。
また、この視点から見る時、決定力のある参加民主主義的方法にするというこ
とがきわめて大事であることがわかる。討議型世論調査も住民投票も決定権を
持たせるかどうかによって、大きく意味が変わってくる。各レベルの政体におい
て決定力のある参加民主主義的方法を採用していることも、ネクスト・デモクラ
シー政体の特徴の1つであると言えよう。
[4]政党政治からの脱却が生み出すもの
 政党政治からの脱却ということも、重要な変化を生み出すものになる。
今の政体においては、政権を握った政党が大きな権限を与えられ、自分たちの目
ざす各種の政策を次々に実現していけるようになっている。その中に有権者の
反対が強い政策が含まれていても、国会で成立させることは可能である。
 新しい政体においては、このようなことは起こらない。一つ一つの政策が評議
会において審議され、各評議員の自主的な判断で票決が行われる。有権者も参加
民主主義的方法を通じて、このプロセスに影響を与えることが可能になる。これ
によって、政党の盛衰ではなく、個別の政策の是非に関心が集まる政治に変わる
ことが予想される。
 この変化は、有権者の政治的関心や判断力を高めていく作用を持つと思われ
る。能動的な市民はもとより、その他の有権者市民においても政治をあきらめ、
無関心に陥ることは少なくなる。社会の中で各政策の是非が論じられる機会も
増えると思うので、自然に情報も増え、判断力が高まっていくことが期待できる。
長期的に見れば、そのことが最も重要な変化となるかもしれない。
 ということで、政治が数の力によって決まるものではなく、個別の政策をめぐ
る話し合いと多くの人たちの合理的な判断によって決まるものになるという本
質的な変化が生まれる。これも、政治の重要な質的変化を意味するものである。
[5] 集団主義的な政治との訣別
 ローカル・デモクラシーの叙述でもしばしば言及したことであるが、あるべき
ローカル・デモクラシーにおいては、個人の自由と自発性の尊重が確立したもの
になるべきであり、そういう変化が期待できる。自由民主主義政体においては、
個人の自由は大事な価値とされながら、組織の力、集団の力が強く働く方への変
化が進んできた。現代において、組織に属さない個人は無力感を持たざるをえな
い状況になっている。
 この点も、新たなデモクラシーにおいては大きく変わることが期待される。
社会において多様性の尊重が原則になると同時に、政治においても多様な立場
が認められ、各個人の自由な意見の発表が活発に行われるべきである。新しい政
体においては、参加民主主義的方法に重要な位置づけが与えられるので、政治へ
の関心を持つ個人にとって言論活動がやりがいのあるものとなる。ネクスト・デ
モクラシーの政治の質は、そうした個人の言論活動の活発化によって、より民主
的なものになっていくことが期待される。
 政党政治からの脱却は、この点でも大きな影響を持つことになると考える。組
織の力、集団の力に依存する考え方と行動様式から、自立した個人として考え、
判断し、行動していくべきだという考え方に変わる人たちが増えていくと予想
されるからである。
[6] 当事者たちの参加によって社会問題を解決する政治へ
 地方と中央に〈社会〉評議会を作り、当事者代表に参加してもらうことも、自
由民主主義の政体には見られない独自の制度である。これは、今の社会に蔓延し
ている差別と抑圧に抗するための強力な手段となる。当事者の声が伝わりやす
くなるし、それによって人々の心を動かしやすくなるからである。もちろん、長
年の差別が一気に消えていくとは思わないが、徐々に状況を変えていくことは
できると思う。その中で、問題に関心を持つ人は確実に増えていくだろうし、そ
ういう人々が社会の中に増えていくこと自体が力になるはずである。ネクスト・
デモクラシーの下では、当事者を中心として、さまざまな問題についての取り組
みが始まることになる。それによって、社会全体が傍観者の少ない、思いやりの
あるものに変わっていくことが期待される。
 ネクスト・デモクラシーの政体は、現代社会が解決を迫られている諸問題に取
り組みつつ、すべての住民による自治を実現しようとするものである。この点で
も、時代が求める政治のあり方を指し示し、実現するものなのである。

2節 新政体の名称案と歴史的な意義
 以上のように、ネクスト・デモクラシーとその政体は、公共性の政治原理にも
とづき、すべての住民の参加、民衆の自治、各地域の連帯、個人の自立と自由、
他者への共感と思いやりを特徴とする政治と社会を実現しようとするものであ
る。
 これらの特徴と、評議会という歴史的事象が本来持っていた「民衆の連帯」と
いう性格を合わせ考えると、新たなデモクラシーの名前は、「連帯民主主義」が
ふさわしいのではないかと思うのだが、どうだろうか。
 さて、最後の問いは、連帯民主主義の政体の誕生が歴史の上で生み出すものは
何かということである。
 この章で見てきた新たな政体の本質的特徴や、国家の消滅という目標、さらに
近代が生んできた差別問題への取り組み、資本主義のコントロールなどの諸側
面を結びつけて考えるとき、この政体の誕生は「近代」という時代区分の終わり
の始まりという意味を持つものではないかと考える。
 その理由は、第一に自由民主主義政体というものが、近代の途中で誕生した後、
近代社会のシステムを支える重要な役割を果たしてきたことである。第二に国
民国家というものも全世界に広がり、一般的な政治の枠組みになっていること
である。これらは、資本主義経済とともに、近代社会のシステムの主要な柱とな
っているので、それに終止符を打つ政体・脱国家的な政治社会の誕生は、近代シ
ステムの崩壊の始まりという歴史的意味を持つと思うのである。
 もう1つの柱である資本主義経済も現代では大きな問題を孕むようになって
おり、終焉が近づいている感がある。新たな政体は、これに対して当面は改革と
いうアプローチを採るのであるが、この終焉との関係ではどうすべきだろうか。
私は、真に「よりよき経済」=人間的な経済を実現するためには、資本主義その
ものの廃絶が必要だと考えている。また、それは必然的に起こるとも考えている。
しばらくは紆余曲折の過程があるにしても、いずれは必ず終焉の時を迎えるに
違いない。こうした過程を促進するという点でも、新たな政体の誕生は近代の終
わりの始まりを意味するものとなる。
 さらに、近代がもたらしてきた数々の負の遺産との関係でも、新たな政体の誕
生は歴史的な意味を持つものである。ここで、負の遺産というのは、近代が始ま
って以降に発生した、無数の戦争と人種差別、民族差別、労働者・失業者の極端
な貧困や第3世界の飢餓のことである。差別との関係では、市民を殺傷する無差
別テロも負の遺産のリストに加えるべきだろう。「連帯の政治」を目ざす新たな
政体の誕生は、これらとの訣別、完全な消滅を目ざすという面でも近代の終わり
の始まりを画するものとなる。
 もちろん、いずれの課題も一朝一夕に実現できるものではない。しかし、上記
のような変化は時代の要請でもあると思うので、世界中で起きていく可能性が
ある。そうした潮流と手を結びながら取り組み続ければ、やがて実現の道が開け
てくると思う。新しい政体の下で実現する公共性の政治が、そうしたよりよき社
会とよりよき世界に向かって人々が不断の歩みを続けていくことを可能にする
はずである。
 なお、資本主義の終焉という論点に戻って言えば、私は、よりよき社会・経済
とよりよき世界を求めるという視点から、ある種の社会主義への移行が望まし
いと考えている。現時点では、それがどのような形態・構造のものであるべきか
についての具体的な結論は持ち得ていないのであるが、ただ一つ確信している
ことがある。それは、新たな社会主義は、確立された民主主義政体と民衆自治の
理念を備えたものにすべきだということである。そのためには、資本主義の終焉
に先立って連帯民主主義の政体を確立しておくことが大きなプラスになると思
う。その下で私たち市民が分権・自治の社会の民主的運営や、経済のコントロー
ルおよび差別なき社会の作り方について、実地の訓練を積み重ね、習熟すること
ができると思うからである。
 このような歴史的役割・意義を持つものとして、近い将来に「連帯民主主義」
の名に値する新たな民主政体が誕生して、衰退を加速しつつある自由民主主義
政体に取って代わる日が来ることを切実に待ち望んでいる。
                             


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